デザインコンセプト
<トータルデザインでブランドイメージ向上>
iMacやiPod、iPhoneなどアップルの商品を購入するとデザイン性の高さはもちろん、そのパッケージデザインから面がフラットで余計な膨らみや段差が一切ない箱など細部に至るまで、トータルに美的かつ合理的にデザインされていることに気づく。
個人的には食事をするときや洋服を買うときなど商品自体の品質や店員のサービスはもちろん、お店のインテリアやロゴマーク、ショップカード、梱包に使うシール、手提げ袋、メニューやウェブサイトなどトータル的なビジュアルの視点を重視する。なぜならそれらお店が発信するツール類にはお店の理念、感性や価値観であるいわゆる世界観が色濃く反映されているからだ。服装、髪型や持ち物、車や家の雰囲気などでその人がどういう人なのかがある程度予測できるのと同じだ。商品がいくらよくても例えばそれを入れる手提げ袋や手渡されたメニューがダサかったらがっかりする。派手さや豪華さを言っているのでない。ようはセンスと丁寧さだ。我々消費者は商品と共にそのブランドの世界観も合わせて買っていることを忘れて欲しくない。
普段ロゴやチラシなど単体でのデザイン依頼があった場合は、極力トータルデザインをお勧めしている。それだけではデザインの効果が充分に発揮できないからだ。映画で例えるとロゴやチラシなど単体のデザインは役者の一人に過ぎない。いくら役者一人が頑張ってもストーリーはもちろん、脚本家、共演者、カメラマン、美術監督そして監督など制作に関わるスタッフ全員の技術が高くなければ決して良い映画にならず、人に感動を与える作品にはならない。つまり前述のツール類をトータル的に一つひとつしっかりと細部まで、かつ継続的にデザインしてこそ初めて、信頼される企業や商品になり、世の中に「ブランド」として確立されていくのである。
近代建築の巨匠ミース・ファンデル・ローエは「神は細部(ディテール)に宿る」という言葉を残した。優れた作品には人智を凌ぐ秀逸な細部があるという意味で、建築の世界では今でも使われている言葉のようだ。逆に言うとデザインする上で余白のとり方、フォント、紙や素材の選び方、文字の大きさや太さの微調整など細部にまでこだわったデザインは、大袈裟に言えば時として神がかり的なブランドを創り得る可能性があるということだろう。
細部まできっちりデザインされているという印象を消費者に与えられることができれば、高い広告料を払わなくてもそれを見た消費者が勝手に宣伝してくれる。本人がいくら「自分の店はうまいよ!」と言い張ってもどこか信憑性に欠けるが、誰かが「あの店うまいぞ!」って言っている口コミは信頼性があり、何故か信じてしまう。その口コミを生じさせることこそ本来のデザインの役割であり、ブランドの本質だと考えている。
そしてそのブランドを創る上で重要なことが、企業の想いや目的をわかりやすくグラフィックとして具現化することである。
岡山県の教育や文化を通して、地域づくりに情熱を燃やす人々を支援している公益財団法人福武教育文化振興財団のCI(コーポレートアイデンティティ)&ブランディングデザイン。
開かれた財団であることを県民にアピールしたいとの依頼から、まずはロゴマークを作成した。そのヒアリング時に次のような要望があった。
- 一般の人からの認知度が低いので、高くしたい
- 人を感じさせるデザインにして欲しい
- 助成対象は岡山県内だが思想は世界へ
- 世界共通の価値観的な要素を入れたい
- オリジナリティを出したい
そこで提案したのがこのデザイン。コンセプトは以下の通り。

「F」をモチーフに「人」と「人」が結びつき、支え合い、触れ合う様子を表現。同時に地域の教育、文化との結びつきを強め、より充実した支援体制を表現している。また曲線は人間らしさを表している。福武(FUKUTAKE)のFと財団(FOUNDATION)のFであるのと同時に、財団のアイデンティティを表す、以下のFでもある。Free,Fair,Faith,Family,Future,Feel,Field,Fine,Friend...
カラーのスカイブルーは、世界に広がり、人の活動をいつでもどこでも、誰にでも、寛大にかつ平等に見守ってくれている「空」をイメージ。また「晴れの国・岡山」の地域特性を表現しており、同時に、教育・文化の新たな価値観を創造し続ける貪欲さとフレッシュさを表現。
これらのコンセプトに沿って名刺、封筒などのステーショナリー、社章、パンフレット、賞状、手提げ袋、財団主催イベントフライヤーや機関誌など財団から発信するもののほとんどをトータルでデザインしており、統一感の強化、ブランドイメージ向上、そして費用面を含めた制作過程の簡素化を図っている。
―以下、財団・中野行雄常任理事談―
ロゴマーク導入以降、マークの意味をスタッフが共有することによって、財団全体の目的意識が明確になった。対外的には名刺交換時に「このマークは?」から始まるコミュニケーション機会が増えたのと同時に、「ロゴがいいですね!」と言われることによる誇りや責任感の向上が見られるようになった。さらにロゴマークの意味を相手に伝えることによって、相手方の財団イメージの向上と財団への理解を深めてもらい易くなり、全体として財団のポジティブで好ましい統一したイメージを発信でき、認知度拡大につながっている。
<グラフィック、空間、WEB。デザインの三位一体で患者へ安心感を与える。>
今年の初め、不意に侘び寂びの世界を堪能したくなり、京都は樂美術館を訪れた。樂美術館には樂家歴代の作品や茶道工芸品、古文書などが収蔵・展示されており、樂家初代長次郎の「黒楽茶碗 銘『面影』」はあの千利休の美意識の最高峰と称されている。残念ながら今回は巡り合えなかったが樂家450年の作陶世界を翫味できた。
千利休と言えば我々の世界では、日本で最初のクリエイティブディレクターと言われている。茶道具をはじめ床の間、花入、裂や扇の紋様の見立てから茶会などのイベントプロデュースまで利休独自の卓越した審美眼を通して、さまざまな新しい試みを茶の湯に持ち込んだ。